
井上真晴さん、井上恵美さん、小貫光慶さん
就労先「常総井上農園」
常総井上農園は井上真晴さんが3代目、お祖父さまの代から続く農園で、創業から60年以上になるそうです。現在、主に作られているのはキャベツ・白菜・長ネギの3種類です。もともと白菜を作っていましたが、先代の時には贈答用としてスイカやメロンも手がけ、今は経営の安定を考えて現在の3種の野菜へと転換されました。
作物を切り替えたタイミングで外国人技能実習生を受け入れるようになり、1年を通じて切れ目なく作業・出荷ができる体制を整えられたそうです。また、市場価格による変動リスクを避けるため、契約出荷に切り替え、安定した販売ができるようにもなりました。
ごきげんファームとの出会いときっかけを教えてください。
従業員も増えてきましたが、農業の管理作業、特に除草がどうしても人手不足になることが悩みでした。しかし通年雇用を増やすほど人件費がかさむため、何かいい方法はないかと考えていたところ、農業普及センターとの交流の中で「農福連携」という取り組みを知りました。
農林水産省が主催する農業版ジョブコーチの研修に参加した際、そこにごきげんファームの職員がいらっしゃいました。茨城県から参加していたのが私とその方だけだったこともあり、農家と福祉事業所という立場で話が弾みました。「農福連携に取り組みたいのだが事業所を探している」と話したところ、「うちでもやっているかもしれません」と言ってくださったのがきっかけです。
その後、研修の一環でごきげんファームを見学させていただき、代表の伊藤さんのお話もうかがいました。皆さんが一生懸命体を動かして作業されている姿を見て、ぜひ一緒に取り組んでみたいと思いました。

実際に受け入れてくださってどうでしたか?
事前にごきげんファーム上郷事業所の職員さんと、どんな作業ができるかを丁寧にすり合わせていたので、大きなギャップはありませんでした。ただ、実際に関わってみて改めて気づいたことがあります。
井上恵美さんは以前保育士されていて、学生時代に知的・身体障がいのある方の施設で実習を経験されていたので、障がいのある方と関わることへの不安は少なかったのですが、小貫さんは実際に一緒に働くのが初めてで、コミュニケーションが上手く取れるだろうかなど、最初は少し戸惑いもあったようです。
ところが一緒に作業してみると、それぞれ個性や考え方を持った人たちであり、お互い自然にコミュニケーションが生まれていました。「知ってみると、ただ人間同士なんだな」というのが率直な感想で、それは今も変わりません。
現在ごきげんファームの利用者さんに担当していただいている作業は、除草をはじめ、ネギの収穫、キャベツや長ネギの定植、コンテナへの積み入れ作業などです。今年は試験的に玉ねぎも栽培し始めましたので、収穫や袋詰め・計量といった作業もお願いできればと考えています。
障がいのある利用者さんとの関わりで大切にしていることは?
まず事故なく、安全に作業ができることを最優先にしています。利用者さんが作業中にトラクターなど大型車両が気になって持ち場を離れてしまうことがあったのですが、そういった場面ではすぐにごきげんファームの職員さんに声をかけて対応していただいています。
もう一つ大切にしているのは、挨拶とコミュニケーションです。「おはようございます」「今日は暑いね」といった短いやりとりでも、利用者さんがとても喜んでくださると事前に聞いていたので、外国人の職員も含めて全員で挨拶を心がけています。外国人職員の一人をごきげんファーム担当として設け、私たちが不在の時でも一緒に作業できる体制にしています。
利用者さんは顔や名前を覚えるのがとても得意で、「今日は○○さんお休みなの?」「今日は〇〇さんと一緒で嬉しい!」などと気にかけてくださる姿を見ると、こちらもとても嬉しくなります。
印象に残っているエピソードはありますか?
利用者さんと一緒に作業する中で、様々な人生経験を経て、今ここで働いているというエピソードを聞いた時のことです。詳しくはお話しできませんが、その時は「笑顔で働けていて、すごいね、良かったね」と心から思いました。
そういった個人個人の背景を知ることで、お互いへの理解が自然と深まっていく。それを後から現場の職員が報告してくれた時に、農福連携の取り組みの意味をあらためて感じました。一緒に作業する中でしか生まれない関係があるんだなと思います。
将来の夢や目標を教えてください。
私たちは、我々の農園に関わる皆様がより幸せになっていただきたいということを目指してやっています。職員に対する福利厚生も、できるかぎり向上していければと努力しています。それに伴い、農福で関わってくださる方たちの工賃アップにも取り組んでいきたいと思っています。
それから、これまで2年間ごきげんファームのみなさんと一緒に取り組んできて、どなたがどんな作業が得意かも少しずつわかってきました。これからはその日に来る利用者さんの顔ぶれを見て、この作業ならお願いできそうかな?といった、その方の得意を生かした作業をお願いしたいと思っています。今後、こんな作業もできそうですといったことをごきげんファームさんから提案いただけたら嬉しいです。
最後に
今回は常総井上農園さんにお邪魔し、約1時間ほどお話を伺いました。終始、私たちのことを気遣ってくださる言葉や温かい気持ちにあふれていて、取材していた私自身もとても幸せな気持ちになりました。農福連携という取り組みを通じて、農家さんと利用者さんがお互いに顔と名前を覚え、自然な関係が生まれている。その豊かさを改めて感じた取材でした。
